心の苦しさと悩みを解決する記憶ネットワーク再構築療法

04. 人間が安心になるための群れを形成の流れ

次に、人が群れを作る動物として、どのように成長していくのかを順を追って説明します。

ここでは、母親と赤ちゃんの関係として説明します。

『自己防衛機能』を他者に委ねるようになる流れにおいて、母親は、その種(タネ)になりやすいところはあります。

子供を体内で育て、出産し、母乳を与える役割を果たす母親という存在(環境)に赤ちゃんは慣れ親しんでいるからです。

しかし、赤ちゃんを『自己防衛機能』を他者に委ねる流れにのせることに限れば、母親こそが特別な存在であるという訳ではありません。

ですから、文中の『母親』という言葉は、日常生活において密接な関わりをもって面倒をみてくれる人(母親や父親、または、大人など)という意味としてご理解下さい。

05-01. 『自立』に関するイメージの修正

この世に生を受けた赤ちゃんは、しばらく母子一体となった状態で過ごします。

そして、歩行能力の発達に伴って、やがて、子供と母親の分離が起こり始めます。

この母子分離~自立の様子は、一般的には次のように説明されます。

  • 母親を安全地帯として、安全地帯の外へと行ったり来たりすることを繰り返し、母親から離れられる距離と時間を徐々に長くしていく
  • そんな中で、子供は母親への心理的な依存から徐々に独立していき、一人の個人として自立する(自分で何でもできるようになり、社会の中で一人でも生きていけるようになる)

群れることを前提にすると、自立は次のようなイメージになります。

【群れることを前提にした自立とは】
容易に群れに所属したり新しく群れを形成したりできる能力を身につけ、群れに守られたり群れを守ったりしながら、群れの中で自由に生きていけるようになること

05-02. 子供を守るとは?

小さな子供が、母親に守られている様子を、子供を主体とした文章で表すと次のようになります

子供は『自己防衛機能』を母親に委ね、母親はそれを受け取りその役割を果たすという関係が成立している

子供は、母親とのこのような関係の中で、母親を安全地帯として位置付けます。

心理的にも身体的にも未成熟な時期の子供は、母親を外界と自分の間の楯のように扱います。

自分が不快な状況に陥るようなことから物理的に守ってもらおうとし、不安を感じると母親の後ろに隠れたりします。

心身の発達に伴って、次第に母親を後ろ楯のように扱うようになってきます。

自分で考えて行動し、多少のことなら不快な状況にならないように防げるようになります。

不安よりも好奇心の方が勝ったとき、母親から離れて、興味の方向へと引き寄せられていくようになります。

これも母親という後ろ楯があるからできるのです。

また、予測能力の不足も、この興味へひきつけられる衝動を後押しします。

その結果、予想外の結果も起きやすく、そんな経験によって不快な気持ちになった時は、母親という安全地帯に逃げ帰ります。

子供が母親のもとに逃げ帰ったときに、本当に求めているのは、「親が自分の代わりに起こった出来事へ対処してくれること」ではありません。

目の前の事態から自分の力で離れて安全地帯へと既に逃げ帰っているからです。

直面しているのは、その事態によって自分が不快な気持ちになっているということです。

ですから、子供が母親に求めていることは、母親が自分の不快な気持ちを解消して、安心を感じさせてくれることなのです。

子供がそう期待するようになるには、赤ちゃんの時からの「泣いたら抱き上げる」ということを習慣化しておくことが必要です。

子供の気持ちを安心にするために、母親は難しいことをする必要はありません。

泣きながら逃げ帰ってきた子供を抱き上げて、子供が泣くに任せて、「怖かったね」「痛かったね」などと言ってあげれながら、泣き止むのを待っているだけで良いのです。

ただそれだけで、子供は安心で穏やかな気持ちを取り戻し、やがて自ら安全地帯から好奇心の赴くままに離れていきます。

【補足】
話は少しそれますが、「おもちゃを買って欲しい!」と泣き叫ぶ子供への対応も同じです。
「そっかぁ~、おもちゃ買って欲しいよね、ヨシヨシ…」と言って抱 き上げていれば、おもちゃを買わなくても、子供は安定した気持ちを取り戻します。
多少手間がかかることもありますが、他のことは一切しなくても良いので、考え方によってはこんなに楽なことはありません。

母親の目が子供に届かない時間の割合が増えるに従って、母親の役割の重点は、『良くない出来事から物理的に守ること』から『不快な気持ちを穏やかな気持ちに戻す手助けすること』へと変化していきます。

【補足】
余談ですが、 もし、「不快な気持ちは穏やかな気持ちに戻すことができる」という安心感がなければ、不快な気持ちになることを恐れて、自由には行動できなくなり、
  • 親の言う通りの行動する
  • これまでの経験の中で安全だった行動という少ない選択肢の中から選び出して行動する
  • 人が既にやっていて安全が確認したことをする
  • 人と同じことをする
といった行動しか出来なくなってしまうでしょう…。

05-03. 守られていると感じる空間 : 安心空間

子供にとっての母親は、気持ちを穏やかな気持ちに戻してくれる安全地帯です。

子供が母親という安全地帯から離れられる距離と時間は、子供の成長に伴って長くなっていきます。

この子供が母親から離れられる空間は、『守られていると感じる空間』(以降、『安心空間』と記述します)で、子供が自分らしく自由に振る舞える空間です。

子供は、『安心空間』の中で安心に包まれるからこそ、自由に行動することができます。

そんな雰囲気の中で『安心空間』は、次第に大きく広がっていきます。

そして、子供は、「嫌なことがあっても、安全地帯に帰って抱きしめられながら泣けば、穏やかな気持ちを取り戻せる」ということを無意識的に理解していきます。

つまり、そのような習慣が出来ていくのです。 この様子を、次のように理解します。

  1. 子供が母親という安全地帯に『自己防衛機能』を委ねる
  2. 母親は子供から与えられた安全地帯という役割を受け入れる
  3. その関係性の成立によって、子供の心の内側から安心感が生じる
  4. その安心感は、母親を中心とした空間に広がる
  5. 母親を中心に生じた安心感は、周囲の空間を包み込む
  6. 安心感が包み込む空間が、子供にとっての『安心空間』になる
  7. その空間の中で、子供は自由に活動できる
  8. その『安心空間』の中で、子供が母親から離れたりくっついたりする
  9. 不快な出来事があっても母親のもとに戻り、抱き上げられて穏やかな気持ちを取り戻す経験を繰り返す
  10. また、行動範囲を広げても、悪いことが起こらなかったという経験も繰り返す
  11. そのような経験を積み重ねることによって、子供の中にある安心感が更に強まる
  12. 安心感が強まった分だけ、『安心空間』は更に広がる
  13. 空間が広がった分だけ、子供の行動範囲は広がる

つまり、『自ら行動して行動に慣れることによって、行動範囲を広げていく』のではなく、『安心が強まることで『安心空間』が広がり、その空間が広がった分だけ行動範囲も広がる』と理解できるということです。

この『安心空間』は、母親という安全地帯があるからこそ生じる領域なのです。

05-04. 『安心空間』の更なる広がり

母親を中心とする『安心空間』が広がってくると、その空間に、子供と母親以外の人間が入り込む余地が生まれてきます。

そんな状態の中での、次のような人との新たな関わりが重要になってきます。

  • 他の子供の母親
  • 幼稚園・保育園の先生
  • 面倒を見てくれる年上の子供
  • 学校の先生(小学校低学年~中学年程度)

母親との距離が遠く離れると、母親のところに戻るよりも近いところに、これらの人が存在する確率が高くなってきます。

そして、子供はつらい思いをして泣いているときに、近くの母親以外の人たちに抱き上げてもらえるような経験するようになります。

このとき、子供も気持ちがスッキリするまで泣けば穏やかな気持ちに戻れるということを感覚的に理解していますから、抱き上げてくれる相手には抵抗せずに身を任せて泣くことが出来ます。

これは、母親だけでなく、母親以外の人たちでも、自分の気持ちを穏やかな気持ちに戻してくれることを知る経験です。

そのような経験によって、第2の安全地帯を得て、『安心空間』は更に広がります。

その広がりは、新たな第3、第4…の安全地帯へと芋づる式につながり、安心な雰囲気の中で自由に行動できる範囲を広げ続けることにつながります。

身体能力や知能が発達してくる小学校高学年程度以上になってくると、同級生・先輩・後輩といった人たちの中でも、お互いに安全地帯的な役割を果たすようになってきます。

このようにして得られる『安心空間』に身を置いているという感覚によって、子供の心には内側から安心感が湧きおこってきます。

この安心な感覚が生じることも、人が群れを実現するために本能的に生じる感覚なのだろうと想像しています。

05-05. カウンセリングの意味

本論から少し話がそれますが、ここまでの内容が理解できると、「カウンセリングとは何か?」が分かってきます。

  • カウンセリングによって期待できること
  • そのために、カウンセリング中に出来ると良いこと

が明確になります。 それは、

  • 期待されること 『安心空間』の種(タネ)を持つこと
  • 種(タネ)を持つために、カウンセリング中に出来ると良いこと 犬が腹を見せるに近い行動をすること(弱音を吐くこと、不安を話すこと、泣くこと…)

それだけです。

難しいことをあれこれと考える必要はないのです。

カウンセリングの中でのそんな体験の繰り返しが『安心空間』の種(タネ)を作ります。

そして、『安心空間』の種は、『安心空間』を日常の世界へと大きく広げていくことにつながります。

やがて、心に苦しさばかり感じる世界は、安心な世界へと変化し、心の苦しさから解放されるのです。

これをベースとして、その上に各種心理療法が行われます。

また、不必要に身に付いた価値観や防衛機能などに気付き、そこからの解放されるのも、このベースがしっかりしているからこそ起こる変化なのです。

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この記事は、ピュアハート・カウンセリングの心理カウンセラー 田中 順平 が書いています。

心理カウンセラー 田中 順平

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