04-05.子供はみんな催眠状態

私が心の苦しさについて理解したことを、暗示という側面から説明します。

序論

本題の前に、極論的ですが、『私たちの知識は、突き詰めれば、ただの暗示に過ぎない』といえるということを説明します。

【例1】

天動説と地動説のことを考えてみて下さい。

中世のヨーロッパでは、「太陽が地球の周りを回っている」という天動説が信じられており、コペルニクスが唱えた「地球が太陽の周りをまわっている」という地動説は異端だとされましたが、今ではそれが受け入れられ、逆に、もし、天動説を唱えれば馬鹿扱いされてしまいます。

この中世のヨーロッパの状況は、「人々は、世の中に受け入れられているつじつまが合っていると感じる解釈を真実だと思い込んでしまう」、つまり、暗示に掛ってしまうということを示す良い例です。

ただ、これは科学が進歩していない昔だから起ったことではありません。

現代においても同じです。現在の最新科学であっても、それは「現時点において最もつじつまの合う説明」というだけのことなのです。

我々は、中世の人々のように、それを真実として受け入れているのです。

 

【例2】

暗示を受け入れるもう一つの流れを説明します。

私たちが理解できないことに出合うと、それを理解したいという心理が働きます。

そして、既に情報があれば知識として拾い上げます。

もし、既出の情報が見つからなければ、それらしい解釈をひねり出して、「それが自分にとっての真実だ」という暗示を受け入れます。

このように、「理解したいと思う」ということは、「自分から『暗示を受け入れたい』と望んでいる」ともいえるのです。

(未知の分野で騙されやすいのは、人間のこのような性質によると考えられます。)

 

【例3】

例えば、世の中の人は、パソコンのことをパソコンだと信じています。

しかし、「実は、それはポコペンだった」という考えが広まれば、もう、それはパソコンではなくポコペンになってしまいます。

もともとそれがパソコンなのではなく、私たちがそれをパソコンだと信じているから、それはパソコンなのです。

 

序論まとめ

例1~3で説明したように、私たちは暗示を受け入れ、自分の行動や存在のよりどころ、つまり、知識と認識して生きています。

うまく伝えられたか少し不安ですが、これらが『私たちの知識は、突き詰めれば、ただの暗示に過ぎない』と書いた理由です。

 

【補足】
たぶん、いくら科学が進歩しても、「つじつまの合った解釈」ができる範囲が広がったりその解釈がより科学っぽくなったりするだけで、人類が真実には辿り着くことが出来ないでしょう。
つまり「その時点で最もつじつまの合った解釈」という域を超えることはないのだと思っています。

04-05-01.私たちの心に入り込んでくる流れ

  • 心を苦しめる暗示とは、どのようなものか?
  • 心を苦しめる暗示は、どのように働くのか?

そんな暗示が、私たちの心に入り込んでくる様子をグラフに表してみました。

【注意】
この図は、私が理解したイメージをグラフ化したもので、調査や統計などによるものではありません。
また、作図技術の問題でグラフは直線的に表していますが、もう少し曲線的に変化すると考えています。

【グラフの説明】

■青線の説明 人が暗示を蓄積していく流れは、大まかには次のようになります。

  • 幼い頃は、まだ固定的な暗示にとらわれておらず、暗示に対して解放された心理状態です。親の命令には従順で、親の教えはそのまま受け入れる傾向があります。
  • 日々の経験を通して様々な暗示を身につけるに従って、既に暗示が入った部分に対しては、新しい暗示に対して閉ざされた心理状態に変化していきます。

この子供の暗示を受け入れやすい心理状態は、催眠療法で催眠誘導した後の心理状態によく似ています。

そこで、年齢に応じた暗示の受け入れやすさをライフサイクル催眠深度(今回の説明のために適当に考えた造語)としてグラフに表してみることにしました。

新生児のライフサイクル催眠深度を100%として、成長につれてそれが変化するイメージが青い線です。

ライフサイクルの中で、第一次反抗期以前が、最も暗示を受け入れやすい時期だと考えています。

 

■赤線の説明

  • グラフの赤線は、蓄積された暗示の量を示しています。
  • ここでの暗示は、学問や労働に関する専門知識よりも、人との関わり方や起こった出来事への対処、世界観に関する暗示です。
  • 生後からしばらくの間は、親のしつけや教えをそのまま暗示として受け入れて、急速に暗示を蓄積していきます。
  • 幼児期に差し掛かると、自分で考え行動できるようになってくるため、親からの暗示を受け入れる勢いが減速します。(この受け入れ速度の減速を、親の目には「子供が親に反抗している」と映るのです。) 【第一次反抗期】
  • 第一次反抗期に、子供は、「親からのしつけ」という暗示を受け入れると観念することで、家庭の中で安心に暮らせるようになります。
  • 暗示は、家庭内だけでなく、家庭外での体験からも得ていきます。
  • 知識や思考能力や行動能力が高まると、蓄積された暗示と、自分が直面する現実との食い違いに気付き始めます。そして、これまで蓄積された暗示の一部が崩壊して再構築が始まるので、苦しい気持ちになりやすい時期です。【第二次反抗期(思春期)】
  • 第二次反抗期では、親の持っている暗示や教育社会の特殊な価値観などとの間に摩擦が生じます。(食い違いが生じる原因としては、親の価値観の偏り、学校教育の偏り、幼い頃の乏しい思考による幼稚な解釈などが挙げられます。)
  • 第二次反抗期の子供を、親が『ひとりの人』として尊重する態度で接していると、再構築が穏やかに進行し、それにつれて子供の心は落ち着きを取り戻します。
  • 様々な人たちとの出会いや様々な体験によって、新しい暗示を得たり、過去に得た暗示が修正されたりして、暗示は少しずつ自分が生きていく環境により適合したものに調整されていきます。ただ、様々な人との関わりや新しい体験が少ない環境では、この変化が起こりにくいと考えられます。
  • しかしながら、子供の頃に得た暗示には、いつまでも心の中に残ってしまうものもあります。

 

人生に影響を与える暗示

『三つ子の魂百まで』という言葉があります。

私は、「人の性格の主要な部分は、3歳までに形成される」と理解していましたが、その根拠は分からないままでした。

しかし、今回想定したライフスタイル催眠深度と照らし合わせてみると、

  • 3歳くらいまでが最も暗示の入りやすい時期で、その頃に入った暗示が人生に大きな影響を与え続ける

ということが、経験的に導き出されたのだと思えます。

私の理解では、この時期は3歳ではなく5~6歳くらいだと想定していますが、この時期に人生に大きく影響を及ぼす何かを身につけるという点では、共通しています。

そして、身につけるものは、得体の知れないものではなく、ただの暗示だと想定しています。

暗示には様々なものがありますが、人の心の成長を考えたとき、「心を楽に保つための暗示」と「心の苦しさの原因となる暗示」を特に重視しなければならないと考えています。

 

暗示が入りやすい理由

この時期にライフサイクル催眠深度が大きくなる理由は次の2つです。

  • 蓄積されている暗示が少ないので、新しい暗示が入りやすい
  • 人間関係の大部分が、家族(特に親)に限定されてきるので、同じようなコミュニケーション、同じような反応、同じようなしつけなど、ある傾向性を持った経験が日々繰り返される

 

この時期に受け入れた暗示が人生を左右してしまう理由

日常の繰り返しによって身につける暗示は、意識の深い部分(無意識)に刻み込まれてしまいます。

それは、気付こうとして真剣に向き合わなければ、まず気付くことはできません。

気付かないのですから、変わろうと思うこともなく、変われるはずもありません。

この人に定着して変わりにくい性質のことを、性格と呼んでいるのだと考えています。

ただ、性格が変わらない理由は、『暗示に気付かない』ということだけですから、気付くことができれば、変わりたければ変われるものなのです。

自分に根づいた暗示に気付き、それを言葉で表現できれば、現実とのギャップが意識できるようになります。

また、暗示を受け入れた背景が理解できれば、これまでの自分の頑張りをねぎらうことにもなります。

そんな中で、自分を苦しめた暗示は次第に薄れて目の前の現実に近づき、それに伴って心の苦しさは解消されていくのだと考えます。

 

【暗示を受け入れてしまいやすくなる状況の例】

1.言語

  • 同じことを繰り返し言われる ・「お前は、何をやらせてもダメだな」 ・「お前は、ダメなやつだ」 ・「お父さんに言って怒ってもらうよ!」 ・「泣くな!」 ・「男の子なんだから、泣くものじゃない!」
  • 子供にとって衝撃的なことを言われる ・「お前は橋の下で拾った子供だ。」 ・「死ね」
2.経験のパターン
  • 同じようなことを繰り返し経験する ・泣くと無視される ・怒ると家から締め出される ・自分が何かを望むと否定される ・自分が望まないことをすると褒められる ・いつも機嫌が悪い ・感情をぶつけられる ・暴力を振るわれる ・無視される ・冷たくされる ・裏面交流的なコミュニケーションをされる ・失敗すると怒られる ・親の考えている通りにしないと怒られる
  • 子供にとって衝撃的なことを経験する
  • ダブルバインド的な状況を作られる ・「幼稚園に行きたくない」と泣いていると、「幼稚園に行け!」と言って怒られ、無理矢理行かそうとされる。 ・「怒らないから本当のことを話しなさい」と言わないことを酷く怒られたから話したのに、本当のことを話すと酷く怒られる。
3.自己の解釈による暗示
  • 1、2のような理解が難しい状況を、自分なりの解釈によって受け入れる ・「僕が無視されるのは、僕が嫌なやつだからだ」 ・「僕が悪い子だから、親は僕を殴るんだ」

04-05-02.子供の心を回復

子供の心を回復させるために

催眠療法の一番の効能は、催眠状態になると、過去に獲得した暗示から距離をとれるようになるということだと考えています。

「泣くな!」「泣いたら怒られてもっとつらくなる」「泣いても何も変わらない」といった暗示からも距離がとれるので、泣きたい気持ちのときには自然に泣けるようになるのです。

一人きりで泣く時とは違い、誰か人に見守られながらオイオイと泣けば心はスッキリとして安心な気持ちを取り戻すことが出来ます。

これが、催眠療法の主要な原理です。 「子供は、何もしなくても深い催眠状態と同じ状態にある」と解釈できると考えています。

もし、その解釈が正しいとすると、子供には「暗示が入りやすい」というだけではなく、「気持ちを回復させやすい」という面もあると考えられます。

ですから、催眠療法を応用すれば、子供がつらそうな時は、ただ抱きしめてスッキリとするまで泣かせてあげれば、子供の気持ちは回復するという仮説が立ちます。

どんな良いカウンセリングよりも効果があるはずです。

(現在、自分の子供で検証中ですが、この理解は正しそうです。)

 

【補足】
小さいうちに「つらい気持ちのときに抱きしめられること」が習慣になっていないと、子供は成長に伴って、親が抱きしめようとしても抱きしめさせてくれなくなっていきます。
その時、親が考えるべきことは、子供に抱きしめさせてもらえるように、それまでに失い続けた子供からの信頼を、いかにして取り戻していくかということです。

 

子育ての最低限のポイント

  • 子供に、「心が苦しくなったとき、抱きしめられながら泣けば、スッキリとして楽な状態になる」という経験を積み重ねさせてあげること
  • 子供が、自分で感じ考え行動するための気力を奪わないようにすること (参考:子供との関わり方の基本方針

 

解いておきたい誤解

子供の心に苦しさを抱えさせてしまう親の多くは、『自立』という言葉を誤解しているのではないかと感じるところがあります。

  • 自立とは、「人の群れから離れて、一人きりで生きていけるようになること」ではなく、「社会という人の群れの中で、一人でも、うまく人間関係作りながら、生きていけるようになること」

一匹狼として育てれば、子供の人生を、孤独で苦しいものにしてしまうでしょう。多くの人は、ここを大きく誤解しています。

 

これらのベースの上に、しつけがあるのだと考えています。

つまり、子供が自立した人生を送れるようになるためには、しつけは最優先事項ではないのです。

そして、これらのベースさえあれば、多少、子育ての手を抜いたり間違ったことを教えたりしたとしても、子供が成長する中で遭遇する出来事や人との出会いの中で、自分の力で修正していけるのだと思います。

 

子育ては他人任せにする方がお互いの為かも!?

人は、どんなに頑張っても、人それぞれが持っている偏りパターン的な反応の全てを消せないでしょうし、逆に、それらがその人らしさにもなるのだと思います。

ということは、親が子供に偏った暗示を入れてしまうことは避けられないということでもあります。

にも拘らず、子供の親や養育者だけが、子供を育てる責任の全てを負ってしまうと、子供に偏った暗示を与えてしまう危険度はアップしてしまいます。

パターン的な反応の繰り返しによる洗脳効果を和らげるためには、子育ての多くの部分を、家族以外の人たちに任せてしまう方が良いのかもしれないと感じます。

仮にそれが正しいとしたとき、親が、子供にそんな環境を与えるために何が出来るでしょうか? 習い事をさせたり、親と一緒にいろいろな場所を連れまわすということも考えられますが、それよりも親の負担が少ないことがあります。

それは、子供が人間不信に陥らないように育てることです。

人間関係の基本は、親子関係(養育者との関係)です。

そこで、信頼関係さえ気付くことが出来れば良いのです。

そうすれば、子供が家庭外でも勝手に人間関係を作っていけるようになるので、家族だけを支配する特殊な暗示だけを受け入れてしまう危険性が下がるのだと思います。

極論すれば、「子供は、親以外の全ての人間が育てれば良い」!?

それが、親のためであり、子供のためであるのかもしれません。

半分冗談ですが、でも、結構、イイところをついているのかもしれないと思います(^_^;)

(ちなみに、親の叱り役あやし役という役割分担によっても、インパクトを和らげることができます。)

04-05-03.「子供の引きこもり」 と 「成人の引きこもり」について

前回の投稿で説明したグラフから、「子供の引きこもり」 と 「成人の引きこもり」について、一つの解釈をご紹介します。

【注意】

1つのことでも、様々な視点から見ることが出来ます。

ですから、これは、一つの解釈に過ぎません。

全てがこの解釈で説明できるとは思いませんが、参考にして頂けるところはあると思います。

 

子供の引きこもり

家庭は、子供が世界観を身につけていくときの基本となります。

子供は、人間関係(人とのコミュニケーション、人とはどういうものか)をはじめて学びます。

はじめて学んだことは、その後の人生において、基本として生きていきます。

やがて、家庭以外でも、様々な経験をするようになります。

また、子供が、外の世界でつらい気持ちになったとき、元気を取り戻せる場所も家庭です。

家庭の中で安心な気持ちになって勇気を取り戻すことができれば、子供は、また、外に元気に飛び出していきます。

このような環境で、子供は、自分が生きていく世界がどのようなものかを理解し、世界観として身につけていきます。

これらを踏まえて、子供が引きこもった場合、その原因の可能性として考えられることを挙げます。

 

1.家の中に引きこもっているとき

親との関わりは、子供にとって安心なものである可能性は高いと思われます。

家庭外の世界に、相当につらい状況があることが予測されます。

家の壁という物理的な壁と家族によって、守られている状態といえます。

 

2.自室に引きこもっているとき

2-1.家庭と同じようなつらい状況が外の世界にもあると感じている

家庭が、子供にとって安心できる状態にないとき、子供は、同じような状況が家庭外にもあると感じてしまう恐れがあります。

家庭の中で頻繁に責められるような状況があれば、家庭外の人も、自分に同じように関わるのだろと、ビクビクした感じになってしまうと想像されます。

家庭外で優しくされる経験が積み重ねられないと、やがて、怖くて外に出られなくなってしまいます。

2-2.つらい経験をしたとき安心な気持ちになれない

「外でつらいことがあっても、家庭の中では安心な気持ちになれない」という状況がある可能性があります。

もっと言うと、親との関わりが、子供にとって安心な気持ちになることを妨げ、より苦しい気持ちに追い詰めてしまっている恐れもあります。

外の世界と家族から、自室に立てこもることで、『部屋の壁』という物理的な壁を利用して、自分を守ろうとしていると推測されます。

 

成人の引きこもり

大人の引きこもりの理由としては、まず、子供の引きこもりと同じ理由が考えられます。

そこに、更にもう一つの理由の可能性が加わります。

親の子供として生まれ、そこから独立して生きていくために、私たちは「世界観を作っては修正する」ということを繰り返しながら、世界観を構築していきます。

子供の頃は、親からの押し付けによる世界観がメインですが、第二次反抗期(思春期)の時期からは、自分の経験や解釈によって、自分独自の世界観へと発展させていきます。

この世界観をもって社会に出たとき、もし、大きなギャップがあった場合、どうなるでしょう?

これまで構築した世界観は、自分が社会で生きていくためには役に立たないということになります。

ここで選択できる道は2つです。

  • 自分の世界観を再構築する
  • 自分が構築した世界観が通用する世界で生きていく

「再構築する」と書くのは簡単なのですが、成人後にそれまでの人生を掛けて身につけてきた世界観捨てて再構築するなど、容易なことではありません。

俗に『価値観の崩壊』と呼ばれるような状態で、大きな苦しみを感じることになります。

たぶん、一人きりでこれをするのは、苦し過ぎると思います。

でも、そんな時期に苦しんでいると、「もう社会人なんだからしっかりしろ」、「いい年して何を甘えているんだ」などと責められるので、自分を責めてつらい気持ちになることはあっても、安心した雰囲気の中で再構築をすることができません。

そこで、「過去に構築した世界観」が通用する世界に留まるしか道が無くなってしまうのです。

 

【補足1】
子供の頃から構築が始めまり、人生において連続的に修正されていくべき世界観が、なぜ、社会で通用しないものになってしまうのでしょう?

これも可能性の話しですが、挙げておきます。

家庭(親)の世界観(価値観)が、社会のそれとはかけ離れている 第二次反抗期に、これまでの世界観を修正して自立しようとしている子供を、親が抑えつけてしまう 今の社会では、正しく世界観を構築させるために必要な情報が、多くの余計な情報の中に埋没してしまい、どれが大切でどれが大切ではないかが分からなくなっている。

勉強やゲームばかりしていると実体験が不足してしまい、自分が経験し、その経験によって学んで世界観を修正するということが起こりにくくなる現代の日本社会が、成人するまで心の自立が難しい状況を作り出している 教育社会という特殊な環境が割り込んでしまっているため、世界観の構築の継続性が断絶させられてしまう

【補足2】
また、『適応障害』と呼ばれる状態になる可能性もあります。
ただ、社会に適応した状態であっても、身を置いた世界の価値観が特殊な場合も、同じような状態に陥ることも考えられます。

こんな解釈もあることを知っておいて下さい。