心の苦しさと悩みを解決する記憶ネットワーク再構築療法

01 催眠療法と「感覚の物質化」

「怖い」という感覚を例に考えてみたいと思います。

「怖い」という感覚は、自分の安全を守るために生じるものですから、全く感じなくなることは生命の危険につながるので、決して良いことではありません。

しかし、理性的に考えると「生命の危険が全くない」と思える物事に対して、強い恐怖を感じる必然性はありません(例 おとなしい小型犬に恐怖を感じる、人前で話すことに恐怖を感じる)。

そのような感覚は、自分を守ってくれるというよりも、むしろ、自分の自由な行動の妨げとなってしまいます。

催眠療法によって、このようなことに対処するときに、「怖い」と感じなくなるような暗示を期待する人が多いです。

実際、「それは安心だ」という暗示を受け入れると、しばらくは怖くなくなることもあるのですが、その後の経験によっては、やがて以前と同じような怖さを感じる状態に戻ってしまいます。

例えば、「黄色いボール」に対して、「赤いボール」だという暗示を受け入れたとしても、そこにあるボールを、他の人たちはみんな「黄色いボール」と言うのですから、やがて「赤いボール」だという暗示は解けて「黄色いボール」という認識に戻っていきます。

「怖い」といった感覚にも同じことがいえます。暗示によって、その感覚を違う意味付けに変えたとしても、それまで「怖い」と表現していた感覚が生じているのですから、やがて元の認識に戻ってしまいます。

また、暗示によって、「怖いと思っていた事象」と「安心」といった感覚を結びつけて「怖いという感覚」との結びつきを切ってしまうと、余った「怖いという感覚」が、新たな事象と結びついて、「5 感覚のあやふやな結びつき」で説明するように、別の精神症状や問題行動を引き起こしてしまうこともあります。

では、困っている場面や対象に対して、「怖い」という感覚が生じなくなればどうでしょう。

暗示によって、「怖い」という感覚の意味付けを変えたり、それを打ち消すための安心感を生じさせようとしたりする必要はなくなります。

また、困っていた場面や対象に対しても、「怖い」という感覚が生じないので、自分らしく行動できるようになります。

「怖い」という感覚が生命の危機とは無関係なものであれば、催眠状態を利用して、このようなことを実現できます。

その方法の1つが、特定の場面や対象と結びついて生じる感覚を、物質のように自分の外へと取り出して対処する方法です。

暗示による対処は、「特定の場面や対象に対しては、その感覚が生じる」という前提で、生じる感覚に対する認知を変化させたり、気付かなくすることによって、「特定の場面や対象」への認知も変化させようとします。

これに対して、感覚を物質として取り出し対処する方法では、感覚と「特定の場面や対象」との結びつきを切り、その感覚を生じなくすることで、「特定の場面や対象」への認知の自然な変化を期待します。

ただ、このような対処は、後で説明する「自動化された守り」を排除することになるので、今後は、新たに生じる心の苦しさを、自分の意思で適切にケアできるようになっておく必要があります。

補足

「自分を苦しめたり不自由にしたりする感覚」を物質のように取り扱って対処できるという説明をしましたが、その感覚の背景には、次の3つの要素が潜んでいます。

(1)嫌な体験

(2)その嫌な体験によって生じた不快な感覚や感情

(3)その不快な感覚や感情が癒やされなかった事情

これらを踏まえると、日常の人間関係の中で、過去に救われなかった感覚や感情を癒やせれば、今の自分を苦しめる感覚も解消すると考えられます。

そして、そのように対処する方が、感覚を物質として扱う対処よりも人間的だと思います。

私たちにせっかく備わっている心を回復する機能に封印をしてしまい、自分の傷ついた心を日常の人間関係の中で癒やせなくなった原因、そして、心が傷ついた人を救えなくなった原因が、「(3)その不快な感覚や感情が癒やされなかった事情」です。

心を苦しさから解放するには、この(3)による洗脳に気付き、それから解放されることがキーポイントとなります。

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この記事は、ピュアハート・カウンセリングの心理カウンセラー 田中 順平 が書いています。

心理カウンセラー 田中 順平

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