01 「世界」に対する私たちのイメージ

1-1 人によって異なるイメージの世界

多くの人は「みんな同じ世界を生きている」と思っています。

ところが、実際は、それぞれの人が持っている「異なるイメージによって作られた世界」の中で生きているといえるのです。

例えば、何かをしていて「どうして、そんなことするの?」と質問されたとき、自分の考えをきちんと説明する人もいれば、何も言えずに黙り込んでしまう人もいます。

もし、それが単なる質問だったとすれば、「黙り込んでしまう」という反応は的外れです。

正しく反応するためには、自分の考えを正確に表現する必要があります。

もし、それが相手を責めるだけの言葉だった場合、「きちんと説明する」という反応は的外れです。

正しく反応するためには、相手の言葉を聞き流しながら、相手の興奮が治まるのを、相手が好むたたずまいで待つ必要があります。

言葉に込められた気持ちを理解して、それに反応しなければ、正しい反応にはならないのです。

このようなことからも、「同じ言葉でも、その意味が異なる世界がある」ということが分かります。

「気持ち」というものは、その実体を目で見たり触ったりして確かめることはできませんから、言葉に込められた意味をしっかり理解しようとしなければ、相手の気持ちを受け取ることはできないものなのです。

気持ちは、言葉に各々の心のフィルターによって暗号化した気持ちを付け加えて発信され、言葉を受け取った人は暗号化された気持ちを各々の心のフィルターによって解読するという流れで伝わります。

心のフィルターは、自身の体験によって学習した「あらゆることに対する意味付け」が蓄積されたものです。

人によって経験は様々ですから、この心のフィルターも、人によって様々に異なっているといえます。

このように考えると、「自分の思った通りの気持ちが相手に伝わる」、「相手の思った通りの気持ちを受け取る」ということは、とても難しいことが分かると思います。

「どうして、そんなことをするの?」という質問にきちんと答える人が持っているその言葉に対するイメージは、「それは単なる質問である」ということと「自分の考えを話せば理解してもらえる」というものです。

黙り込んでしまう人が持っているイメージは、「質問は自分の考えの足りなさをあぶりだそうとする攻撃である」ということと「自分の考えを話しても、理解してもらえない」、「自分の考えを話せば、もっと責め立てられる」というものです。

「機嫌が悪くなると何日も話さなくなる」といった感じになりやすい人も、後者の人と同様のイメージを持っています。

それを言えば責められることになるので、言いたいことがある内は、その言葉が喉につかえてしまい、他の言葉までも発せられなくなってしまうのです。

様々なことに対するイメージは人によって異なります。

しかし、私たちは、他の人も自分と同じイメージを持っていると思い込んでいるところがあります。

そして、その思い込みが強ければ強いほど、気持ちは正しく伝わりにくくなり、誤解も生じやすくなってしまいます。