心の苦しさと悩みを解決する記憶ネットワーク再構築療法

04 慢性的に胸部に感じる不快感

4-1 慢性化した不快感と行動のサイクルの関係

歯痛、頭痛、腹痛などがあると、気持ちに余裕がなくなってしまいます。

胸部の不快感が生じているときも同じです。

「2 誰でも同じように感じる苦しさ」でも説明しましたが、「我慢している」とは「頑張っている」ということです。

例えば、歯が痛いとき、その痛みに耐えるだけでも大変なのに、更に、いつも通りの行動をしようとすると、かなりの頑張りが必要です。

腰痛でも頭痛でも同じで、体のどの部位にでも慢性的な痛みや不快を感じていたら、いつも通りにしているだけでも頑張りが必要なのです。

「3 抜け出せない思考による苦しさ」で説明した「行動のサイクル」のポイントは次の3つです。

(1)何かを感じることがトリガー(引き金)となって、行動のサイクルが始まること

(2)行動のサイクルの目的は、トリガーとなった感覚を消失させること

(3)トリガーとなった感覚があるうちは、行動のサイクルを繰り返すこと

動物らしく生きているときは、自分に何らかの感覚が生じると、それを解消するための行動を起こし、生じた感覚はその行動によって簡単に解消され、行動のサイクルは終結します。

例えば、体にかゆみを感じると、「かゆい部分をかく」という行動が起こり、かゆみが治まれば、その行動は自然に止まります。

このように、人や動物に生じる感覚のほとんどは、もともとは、ちょっとした行動で解消するものばかりで、長く解消しない感覚は、天候や季節のような自然環境が関係するものしかなかったのではないかと想像しています。

しかし、現代社会では、社会の構造や制度、社会的常識や知識、人間的な思考などによって、楽に過ごすことが困難になる状況が引き起こされ、更に、その状態が定常化しています。

そして、その「変化しない」ということが、胸部の不快感の慢性化を引き起こしてしまうとも考えられます。

変化しない状態にはいろいろな状況が考えられますが、その中で最も陥ってしまっていることの多い状態が、何度も説明していることなのですが、「感情を排出できない状況や状態」の定常化です。

ちょっとした感覚をちょっとした行動で解消することを目的とした行動のサイクルが始まっても、定常化した「感情を排出できない状況や状態」によって、トリガーとなった感覚は解消されずに残ってしまいます。

そのようにして慢性化した感覚がトリガーとなって行動のサイクルが始まるようになると、そこから抜け出せなくなってしまいます。

そして、何をしてもトリガーとなる感覚が解消しないことに、混乱してしまうのです。

現代社会には、このような状態に対する誤った情報が蔓延してしまっているため、それを信じた私たちは、自分の状態を正しく解釈できません。

そして、心の苦しさを解消できないばかりか、誤った解釈によって、更に悪化させて、種々の精神的な問題を生じさせてしまっているのが、現代社会に起こっている心の問題なのです。

4-2 慢性化した不快感が引き起こすこと

胸部の不快感から受ける影響は、それを感じる人によって異なります。

その状況において把握している情報、それまでの経験の積み重ね、蓄積した知識、思考の傾向、意識の方向などの違いによって、「それをしてはいけない」という気持ちにさせる「心のブレーキ」として働いたり、「それをしなければならない」という気持ちにさせる「心のアクセル」として働いたりします。

このように、心への影響が分かれてしまうのは、胸部の不快感が人の主観によって好きなように解釈できてしまうことと関係しています。

例えば、三日坊主という状態があります。一般的には、「辛抱が足りないので、何をやっても長続きしない」と理解されていますが、これとは別に、次の2通りの説明もできます。

1つ目は、何もしていない状態のときに胸部の不快感を感じると「何かしなければならない」と解釈して、やりたくないことを始めてしまい、やりたくないから直ぐに止めてしまうという説明です。

2つ目は、本当に望んで取り組んでいるときに、胸部の不快感を意識してしまうと、「こんなことをやっていても意味がない」などと解釈してしまい、せっかく好きでやっていることなのに止めてしまうという説明です。

別の例をもう1つ説明します。

いつも感じている胸部の不快感を、ひとりでいるときには寂しさと解釈して「誰かに自分のことを理解してもらいたい」と思い、勇気を出して話した後には、同じ感覚を「虚しさ」と解釈して「やっぱり、話さなければよかった」などと悔やんだりすることもあります。

胸部の不快感は、変化することなく存在し続け、変わるのは状況だけです。

ですが、人は、その感覚を、何の関係もないその時々の状況に結びつけて、それぞれの状況でつじつまが合うように解釈を変えてしまうところがあるのです。

少し話がそれますが、「つり橋効果」と呼ばれていることも、人の感覚に対する解釈のいいかげんさを示す良い例です。

つり橋効果とは、男女のペアがつり橋やお化け屋敷など、ちょっとした恐怖を感じるところで共に過ごせば、恋愛に陥る確率が高まるという説です。

これも、人間の主観(解釈)は、怖さと恋愛感情を区別できない程度でしかないということを示していると思います。

4-3 不快感を慢性化させる原因

ここでは、心の苦しさを胸部の不快感と仮定したときに、その原因と想定される5つのことについて、身体的な疾患がないことを前提に説明します。

4-3-1 酸素不足による息苦しさ

現在に至るまでの様々な経験によって、日常的な浅い呼吸が習慣となってしまい、その結果陥った酸素不足によって生じる息苦しさを、心の苦しさと解釈しているという考え方です。

対処例は、時々深呼吸したり、姿勢を良くしたり、ジョギングやスポーツをして、しっかりした呼吸を身につけることで改善することが期待できます。

4-3-2 低血糖による苦しさ

血液中の糖分の減少によって低血糖状態に陥ったときに生じる感覚を、心の苦しさと解釈しているという考え方です。

「お腹が空くと機嫌が悪くなる」ということも、これと同じことを指しているのだと思います。

対処例としては、消化の良いものだけでなく、消化に時間が必要なものも一緒に食べると、糖の血中濃度が安定と言われています。

例えば、玄米や五穀米のように雑穀を混ぜたご飯を食べるとか、ライ麦パンや玄米パンを食べるといったことも効果があるといわれています。

現代的なメニューではなく、昔から食べてきた伝統的な献立に従った食事をとるなど、バランスの良い食事をとること(栄養のバランス、消化速度のバランスなど)が大事だということなのかもしれません。

「分子整合精神医学」に関連する情報も参考になると思います。

また、以前、NHKの「ためしてガッテン」という番組で、「食事のはじめに、野菜などの食物繊維をとるようにすると、血中の糖分濃度が安定する」といったことが紹介されていましたので、番組情報などを参考にしてみてください。

4-3-3 疲労・睡眠不足

睡眠不足のときに生じる感覚を、心の苦しさと解釈しているという考え方です。

子供は、眠くなると機嫌が悪くなることが多いですが、大人にもそれは当てはまるということです。

対処法は、「よく休み、よく眠ること」です。

睡眠時間だけでなく、適切な時間帯に眠ることも大切だといわれています。

22:00に寝ることを3日間続ければ、うつ的な気分は改善するという説もあるようです。

(「脳にいいこと」だけをやりなさい! マーシー・シャイモフ[著] 茂木健一郎[訳] 三笠書房 p.162)

頭の使い過ぎのために活発な思考が継続してしまっているようなときは、脳をクールダウンさせないとなかなか眠れません。

次の「4-3-4 慢性化した緊張」での説明のように、意識を感覚に向けるようにすれば、思考をスローダウンさせることができます。

また、瞑想で用いる呼吸法によって胸の苦しさが収まれば、余計な思考が始まらなくなるので、寝付きが良くなります。

4-3-4 慢性化した緊張

日々の生活に合う行動習慣が身につくように、姿勢や呼吸の仕方・歩き方など様々な身のこなしも癖となります。

同じように、緊張が必要な状況(何かに意識を集中させたり、衝撃に備えたり、辺りを警戒したり)で長く過ごしていると、緊張状態も癖になります。

心や体が緊張状態にあると、呼吸が浅くなって「4-3-1 酸欠による息苦しさ」で説明した状態になったり、心身の疲労が回復しにくくなったりします。

対処法としては、普段の生活の中にリラックスするための習慣を組み込むことが考えられます。

最も取り組みやすいのが、いつもの生活リズムを活用できる入浴の改善です。

少し工夫するだけで良いので、新しいことを始めるよりもずっと取り組みやすいと思います。

体を洗い終わった後、湯船に浸かって、静かな音楽でも聞いていれば、のんびりした気持ちになってきます。アロマテラピーを活用して、お風呂をいい香りにして入るのも良いでしょう。

腕や足をもんだり、顔にお湯をかけたり、肩のコリをほぐしたりしながら、体のいろいろな部位の感覚を意識することもリラックスにつながります。

お風呂の他にもリラックスする方法はあります。

例えば、マッサージを活用したり、自然の中で過ごしたり・・・。

個人的には、床屋で散髪してもらうのも、リラックスした気分にさせてくれると感じていますし、それぞれの方のリラックスしやすい方法があると思います。

また、心理療法的な対処に「自律訓練法」というものがあります。

いろいろな本が出ているので、参考にしてみてください。

補足:自律訓練法と催眠療法と「本当の解決」

自律訓練法は、簡単に説明すると「体の感覚を利用して意識分散を行っている」だけのことです。

ですから、この手法にこだわらなくても、例えば、マッサージやリフレクソロジー(足つぼマッサージ)なども利用できると思います。日常生活を少しずつ工夫して、1日の中のリラックスしている時間の比率を大きくしていきましょう。

リラックスした状態が自分のベースになれば、体が疲れたら休息できるようになります。

ため込む前に心の苦しさに気付き、誰かに話して気持ちを吐き出せるようにもなります。

実は、このリラックスした状態こそが、心の苦しさや悩みから解放された状態だということを知っておいてください。

催眠療法というものがあります。

催眠誘導によって生じた催眠状態を活用して、いろいろな心理的アプローチを行う手法です。特殊な心理療法と思われがちですが、一般的な心理カウンセリングや日常生活でも同じことが起こっています。

催眠誘導した後に、何もせずに催眠状態を終了(解催眠)することを繰り返しているだけでも、いろいろな心理的な問題が解決するといわれています。

これは「リラックス状態の定着」と「心理的問題の解決」は同じであることを示していると考えています。

一般的に心の問題と思われていることを解決することだけが、心の苦しさや悩みから解放される方法ではないのです。

4-3-5 自覚できない感情をため込んでしまっている

催眠療法には、感情処理といって、ため込んでしまった感情を排出することに主眼を置いた方法があります。

モーニング・ワークやグリーフ・ワークと呼ばれるものもその一種です。

体験してみれば分かりますが、ため込んでいた感情に気付き、その感情を排出できれば、スッキリとした気持ちになります。

このことから、「心の苦しさは、ため込んでしまった感情が作り出す」と考えることもできます。

これを現実的に考えると、ため込んでしまった感情が「4-3-4 慢性化した緊張」を作り出し、その結果、「4-3-1 酸欠による息苦しさ」を引き起こしていると解釈できるのではないかと思っています。

「4-3-1 酸欠による息苦しさ」や「4-3-4 慢性化した緊張」で説明されている対処でも楽になることは期待できます。

ただ、心の苦しさの原因が、感情をため込んでしまったことなら、「2-2 生じた感覚や感情の対処法」で説明したように、人との関わりによって「心が救われた」と感じる体験を通して、心の苦しさを解決する方が自然ですし、多くの人はそれを望んでいると思います。

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この記事は、ピュアハート・カウンセリングの心理カウンセラー 田中 順平 が書いています。

心理カウンセラー 田中 順平

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