05. 最後に

抽象的な話になりますが、最後に少し書かせて頂きます。

この世の中は、もともと、何かによって分けられているものではありません。

しかし、人々が、様々な経験をしながら過ごす中で、色々な観点で、いろいろな部分に分割されていきます。

色々と分割したところで、もともと一つのものなのですから、分割されたどちらか一方を見たところで、何の意味もありません。

もし、見るとしたら、それそれを分割する『分割する線(こだわり)』を見て、もともと一つのものを分割してみてしまう自分自身の理由に気付き、そこから解放されようとするのが、正しい方向なのです。

反面教師という言葉がありますが、一般的な意味の反面教師として対処しようとしても、『分割する線』の反対側を見ているに過ぎず、反面教師としていた相手から、『分割する線』を確実に引き継いでしまいます。

「なりたくない」と思っていた性格になってしまうことがあるのは、そういう理由なのです。

「根本的に変な人は居ない」と信じています。

誰もが、その本質は、素朴な心の持ち主だと信じています。

しかし、様々な経験によって、本人や回りの人が苦しむ状況が生み出されていくのです。

日本を、お互いを理解し合えるより良い社会をもつ国へと変えていくためには、漠然と社会を変えようとしたり、社会的な個別の課題を解決しようとするのではなく、「家庭のコミュニケーションを正しく機能させる」という目的をもって、社会側からサポートしていくことが必要なのです。

【補足】 05-01. 現代の家庭事情

人は、『社会』というものを形成して生活しているところから考えると、サルや馬たちと同じように、生まれながらにして『群れ』を作りたいという習性(気持ち)を持っている動物なのだろうと思います。

そして、他者が「自分と同じ空間」と感じる領域に存在すると、無意識にその心理が本能として働いて、何らかのコミュニケーションを通して関係性を築きたくなるのが、『人の性(さが)』なのかもしれません。

現代の日本では、サラリーマンの父親は、どうしても、家庭において不在になってしまいがちなところがあります。

それは、父親の問題というよりは、今の日本社会のシステムによって引き起こされているという見方も出来ると思います。

つまり、日本の社会が、コミュニケーション不全のベースを作ってしまっているということです。

そんな状況の中で、父親と家族(特に父親と子供)とのコミュニケーションに何らかの問題が発生しまっても、そんなに不思議ではないように感じます。

また、その問題が、社会の仕組みにより引き起こされているとしたら、父親だけの努力で解決しようとするのは、とても困難なことです。

ですから、まず、家族の全員が、今の日本社会、或いは、近代社会においては、家庭問題が発生しやすい基盤が、家庭以外の要因によって、既に出来上がってしまっているということを理解し、次に、それを回避するために、お互いがどのようなことで協力し合えるのかという意識を持とうとすることが大切なのです。

また、父親も、このような問題があることを理解して、積極的に子供と仲良くなろうとして下さい。

そして、母親に、協力を求めてください。

その為に、夫婦が仲良くなっておいて下さい。

【補足】 05-02. 現代の日本で、『家族の全員にとって居心地の良い家庭』を作っていくために

現代社会では、子供にとって、父親とのコミュニケーションは、日常ではなく、非日常のことになってしまっています。

(朝と夜や休日といった限られた時間、すなわち、子供とっての非日常にしか、父親は存在しないということです。)

ですから、極論すると、父親と子供の関係は、親子になった時点で、既に、社会のシステムによって破壊されているといえ、喧嘩しているのと同じような状態になっているのだと感じています。

(もちろん、そんな中で、良好な関係を築き上げておられる家庭が沢山あるのということも事実です。)

家庭において最優先されるべき課題は、『父親と子供のコミュニケーションの修復』なのです。

家族の間には、家という空間を共有することから、前に説明した「コミュニケーションを持ちたい」という気持ちは常に働いていると考えています。

ですから、コミュニケーションが壊れている状態においては、本人たちが意識できていなくとも、壊れたコミュニケーションを修復したい、つまり、仲直りしたいと願っているのだと思います。

そこで重要な役割を果たすのが母親の存在なのです。

多くの子供たちにとって、母親は、非日常ではなく、日常の存在です。母親は、子供たちの気持ちの中では、一番身近で信用できる存在です。

その子の母親であるという事実は、子供にとって、何者にも勝る偉大な存在であるこということを意味するのです。

そんな位置づけである母親だからこそ、仲直りをしたがっている父親と子供に対して、協力してあげられることは、沢山あるはずです。

【補足】 05-03. 人に優しい世界にする為に

普通、子供が社会に出て行くまでの流れは、次のように認識されています。

(1) 親が子供を育てて一人前にする
(2) その途中、学校教育が、サポートしてくれる
(3) 一人前になった子供は、社会に出て行く

しかし、これまで説明したように、家庭は、子供を自立した人として育てる場所ではなくなりつつあります。

そして、その事によって、日本人の心が病んでいくとしたら、これは、家庭の問題というよりは社会の問題として捉えるべきだと考えます。

宗教的なことを言うつもりはないのですが、母親や父親は、「自分たちが子供を作った」という意識から、子供を自分たちの所有物であるかのような錯覚に陥りがちです。

しかし、『命』という捉え方をすると、父親と母親は、命を生み出すシステムにおいて一役を担っているものの、父親や母親という存在を超えたところから、命は生まれてきます。

そして、その命が生きる場が、社会であるとしたら、

父親と母親は、命(子供)を、この世という社会から預かっている

というように捉えることが出来るのです。

ですから、現代においては、『学力を重んじる教育(というよりは、勉学)の場』と位置付けられていますが、『社会へ子供を返してもらうための調整の場』と捉え直すことが、これからの世の中には必要なのだと思います。

社会が子供を預ける親の中には、心を育てることが下手な人も沢山います。

そして、これまで説明したような状況に陥ってしまう子供たちがいます。

そんな苦しみの種を蒔かれた子供たちをいち早く発見し、救い出すことをその役割とするのです。

もし、可能であれば、教育機関以外でも、大人がそのような子供と関わってあげれば良いと思います。

そして、心の中の苦しみの種を解決した大人に育っていくことが出来れば、その人たちが新しく作る家庭に、社会の子供を安心して預ける事が出来るようになるのだと思います。

そんな社会になったとき、生みの親、育ての親は、ようやく子供たちの本当の親になれるのかもしれません。

あなたの子供、そして、あなたに関わるよその子供が、どのようなコミュニケーションにさらされているかに注意を向けて下さい。

「家庭のコミュニケーションは、外からは見えない」という現実に、どのように向き合っていくかが、現代社会の課題なのだろうと思います。