第5部 私たちの現実

催眠状態は、一般的に「日常生活でも普通に生じている状態」と説明されるのですが、催眠療法には普通とは思えない体験を利用する方法があります。

 

催眠状態を利用すると、例えば、胸のあたりに生じている「心の苦しさのような感覚」を、あたかも物質であるかのように、体の外へと取り出すことができます。

ただ、これは物理的な現象ではなく心理的な現象ですから、他の人がその様子を見ても、取り出したものを見ることはできません。

しかし、本人は「自分の苦しさを、物質として体の外に取り出した」という生々しい体験をします。

 

他にも、「喉に言葉がつかえて出てこない感覚」、「頭が白くなって何も考えられなくなる感覚」など、行動を妨げる様々な感覚や、逆に「本当はやりたくないことを、やらなければならない気持ちに駆り立てる感覚」なども取り出すことができます。

 

そして、物質として取り出した感覚を、適切に対処すれば、その感覚への囚われから解放され、それが原因となって引き起こされていた精神症状や問題行動からも解放されたり、自分らしい感じ方と自由な考えや行動を取り戻したりすることができます。

 

普通に考えれば、感覚は対象や出来事からの刺激を受けて自分の中に生じるもので、形があるものではありません。

ですから、「感覚を物質として扱う」ということは現実的ではないと思えます。

催眠療法を体験したことがないと、「感覚を物質のように扱える」ということを理解できないのは当然だと思いますし、「そんなことが、できるはずがない」と否定しても無理はないと思います。

しかし、催眠状態の中で、感覚を物質のように扱えるのは確かなことなのです。

 

第5部では、催眠状態で起こる「感覚を物質のように扱える」という特殊な心理現象を中心に心の仕組みについて考えていきます。

 

用語

(1)真の現実(達観的な現実)

人類の感覚器官や理解に左右されない真実としての現実

 

(2)知覚現実(客観的な現実)

真の現実からの刺激を感覚器官によって受け取って認識した実体で形成される現実のイメージ

 

(3)記憶投影現実(主観的な現実)

既知の実体の記憶を呼び起こしたり、未知の実体を記憶に基づいて類推したりして、自分の頭の中で創り出した現実のイメージ

 

(4)社会的現実

学問的な裏付けがあったり、社会的に受け入れられたりしている現実のイメージ

 

(5)合成現実(人にとっての現実)

知覚現実と記憶投影現実と社会的現実を統合した現実のイメージ。知覚や記憶に左右されるため個人毎に異なる。人はそれぞれの合成現実の中で生きている。

 

 

※注意 本文中の「投影」という言葉は、精神分析の用語としてではなく、単に「映し出す」という意味で使っています。 

最後に、関連動画を掲載しておきます。
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